宮島の鹿の調査をして頂いた方より

感じたこと

環境省が担当している宮島のシカ対策協議会の名称は「宮島シカ植生被害対策連絡会議」となっています。

つまり、基本的には、宮島の植物に対する影響や対策を考えることが主であって、観光客や地元の人たちの暮らしに対する影響のことは議論の対象になっていない会議だと考えています。

もっと総合的に人々の暮らしと野生動植物との関わり方をちゃんと考える必要があるように思います。

とくに宮島の地元の人たちに必要です。

「宮島シカ植生被害対策連絡会議」では以前、宮島の全町民を対象に「シカに対する意識調査」をされています。

『地元の人が「シカ」に対してどんな考えお持ちか既に調査がしてある。』

地元の人が、シカのことを宮島の歴史や文化のことも含めてよく理解した上で回答しておられたのかどうか・・・

連絡会議事務局からは『もちろん、自分たちの日々の暮らしにかかわることですからマジメに考えて回答しておられます。』という回答が返ってくるでしょうね。
 
「シカ」の問題だけに限ったことではないのですが、貴重な歴史遺産を身近に置き、行政機関をはじめあらゆる団体で「世界遺産」を枕コトバに使い、日々大勢のお客様が来てくださる、というあまりにも恵まれ過ぎた現状に甘えていることに「今そこにある危機」を感じております。

奈良公園との比較

私も中国新聞投書欄の記事を読みました。投書されたのは奈良の方でした。
そこで、奈良の鹿と比較してみます。
 
奈良公園の鹿は春日大社が管理している鹿です。

鹿を管理するための組織が春日大社の中に作られているようです。

鹿せんべいが売られていますが、そのせんべいの帯封一枚につきいくらか定められた金額があり、それが鹿の管理(頭数管理や餌やり等)の費用に充てられているそうです。

したがって、毎年 秋に行われる鹿の角切りも春日大社の行事として行われています。

もっとも、奈良市の市街地で角を切るために麻酔銃や麻酔吹き矢を使うと、麻酔が効きはじめたら動きがおとなしくなりますが、打った当初は痛みのために市街地の中で暴れまわることになります。

そのため、幕で囲った中に追い込んで「鹿の角切り」という儀式として行われていると30年余り前に聞いたことがあります。
 
宮島の鹿は、瀬戸内海国立公園 厳島という国有地に生息する野生動物です。

したがって国有財産の一部ということになります。

宮島に来られたお客様に危害を与えることがあってはいけないので地元の行政機関(合併前は宮島町)の委託を受けて(社)宮島観光協会が鹿の角切りをしております。

お客様のいないところや山に近いところに追いこんで注射器をセットした長いヤリを突いて鹿の角切りをしております。

お客様が鹿に危害を受けた時には宮島観光協会が保険で対応するようにしております。地元住民はこの保険の対象にはなっていません。

人馴れし過ぎて観光のお客様や地元住民に被害が及ぶことが多くなって、合併前の宮島町の頃から役場では鹿のエサやりを規制しておりました。

また一昨年9月に桟橋広場周辺で道路通行規制の徹底ということで鹿のエサ販売業者がいなくなりました。
その結果、桟橋周辺の鹿の数も以前と比べて大変減りました。

山の中へ移動した群れもあるようです。 森の植物に対する食害が懸念されております

じゃあ、鹿がいなくなれば問題は解決するのか?ということになるのですが、鹿がいなくなることによって植物や昆虫(鹿のフンを食べる昆虫もいます)や他の動物などの宮島全体の生き物の生態系にどのような影響が出てくるのか? まだまだこういったところまで研究調査は進んでいません。

江戸時代、奉行所が宮島の山を管理していた頃は、弥山原始林の部分は別としてそれ以外の部分は薪を切出して広島の城下町へ船で運んでおりました。

切った後には植林もちゃんとされておりました。山に人が入って適切に管理することで歩きやすい道や作業するための原っぱがあり、そういった草原が鹿にとってはよいエサ場にもなっていました。

もちろん、市街地に出てきて町の人が与えるエサにありついている鹿もあったようですが、問題は明治時代になってから国の施策として山の空き地にどんどん木を植えたことでした。

山を管理するということを通り越してとにかく植えリゃええ、という状態だったようです。

その結果、鹿がエサ場としていた草地が消えてしまいました。 が、観光のお客様が与える鹿せんべい等のエサや地元の人が与えるエサでなんとか生き延びているのが現状です。

鹿のエサやりを規制した現在の状態は鹿にとっては食糧不足がさらにひどくなった状況です。

とくに仔鹿の成長や健康状態にも影響はあるはずです。

このままの状態が続くと宮島の鹿はいずれ「0」になってしまいます。

 
奈良の都でも宮島でも古くから図絵や和歌等の文学にも取り上げられております。

県北の村に出てくる害獣と同じ扱い方をするのでなく、宮島の場合は文化的、歴史的背景のある生き物としてどうするのか、という議論をするべきなのですが、残念なことに冷静さを失った鹿対策が横行してしまったようです。
 
地元の人にしてみれば「おまえは本土に住んどるけえ、そんとなことが言えるんじゃが、島に居るもんにしてみりゃ鹿の迷惑はたまったもんじゃない!」という声が出てきます。
 
いずれにしても、「必要である」にしても「いなくてもいい」にしても、冷静にちゃんとした根拠のもとに議論をするべきだと思います。




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